できる事をやるしかない

アラフォー妻子持ち医師のなんとなく思っている事

もっと健康に関心を

みなさんが健康について考えるときはどんなときでしょうか?
私は幸いこれといった病気がなく、健診を受けても前の日にお酒を飲み過ぎていなければ、特に異常が見つかることはありません。体型も標準的ですし、自分で感じる不調もありません。それなりに健康だと思います。
 
子供が生まれて、新居を構え、40を間近に控えたいま初めて、健康や自分が将来死ぬ時のことを考えるようになりました。学生の頃や妻と結婚した頃にはそんなことを考えることは全くありませんでした。
 
ですから他の人に偉そうに言えた立場ではありませんが、日々の診察では「若いうちから健康について関心を持って持ってください」と強く訴えたくなります。実際に若い方にも必要であれば余計なお世話とは思いますが、説教くさくお話しさせてもらっています。
 
 
なぜなのか。
 
どんなに気をつけていてもかかってしまう病気、避けられないケガはあります。
ですが、多くの病気は本人の無関心や不摂生が原因です。
10年20年と続く健康への不注意の積み重ねで生活習慣病や癌を発症します。
発症した段階で運良く診断がついたとして、どれくらいの方が生活習慣の改善や治療に関心を持つでしょうか。
 
診断された時点では、これといって困った症状もないでしょうし、途端に命が危なくなることはありません。特に病気だとは感じないでしょう。
今まで通りの生活できて特に困ってもいないのに「明日から○○を食べないようにしましょう」「毎日1時間ウォーキングしましょう」と言われて、よし頑張るぞ、となるでしょうか?
頭ではわかっても、なかなか実践できない、はじめは頑張ったけど長く続かないことが多いです。(もちろん、そういったことができる人は病院にこないですむことが多いのですが。)
 
働き盛りの方が会社の健診で生活習慣病を指摘されることは多々ありますが、仕事と健康を天秤にかけるとどうしても仕事を優先される印象があります。仕事して生活費を稼ぐ、家族を養う役割を担っているのですから、当然のことかもしれません。
朝早く仕事に出て、遅くに帰ってくる、運動の時間なんてどうやっても作れないという方もいるでしょう。もし、食事に気を使って、毎日運動して、となると、仕事を変えでもしなければ到底時間が作れない、そんな方もたくさんいるでしょう。病院でそういう事情を解消することはできません。ですが、健康を損なって仕事ができなくなってしまう方がいることも事実です。
 
 
20年も30年も続けた生活習慣や既に出来上がった生活環境を、「病気」と言われても急に変えられないのが現実です。ですから、生活習慣や生活環境は若い頃から良い状態にしておくべきだと思うのです。
 
 
いうまでもなく、健康は大切です。
その健康の下支えになるのが毎日の生活です。
言われずともそんなことはわかっていると思います。
でも、わかっていても、忙しい毎日のなかで健康について考えることはあとまわしになってはいないでしょうか。
 
健康のために何が必要なのか、何をすればいいのか、何はしないほうがいいのか、教えてもらったことはありますか?健康に関心がある人は、雑誌、テレビ、インターネットの記事などで色々と知識を得ているでしょうし、実践しているでしょう。ですが、仕事や生活が忙しくて、健康に関心を向ける余裕がない人は、健康への取り組みが後回しに、先送りになって、そのうち病気になってしまうでしょう。
 
これは関心の問題ですませて良いのでしょうか?
関心を持たなかった本人の自己責任なんでしょうか?
健康に関する知識はどんな人にも必要ではないでしょうか?
 
 
 
 
私個人は、せっかく義務教育が充実しているのだから、健康についての考え方をもっと学校で教えてあげるべきだと思っています。私は教育現場の実情に詳しくありません。教育現場にいらっしゃる方からは「学校でちゃんと健康に関する教育をしている」「教える事が多すぎて、今以上のことはできない」などの反論があるかもしれません。
 
もし、教えられる環境が整ったとして、「小学生に教えられる健康の話って何?」と問われれば、答えに詰まってしまいます。塩分やカロリーの話をしても難しすぎるでしょうし、太っているのは良くないなどと言えば、イジメの原因にもなりかねません。学校で教えられて、子供さんは興味を持ったとしても、実際に食事を用意するのはご両親でしょうから、親が忙しければ子供も親の生活スタイルに合わせるしかないでしょう。
 
中学生くらいになるとタバコに興味を持つ子供もいるでしょう。大人が「ダメ」ということに、わざと逆らいたい年頃もあるでしょう。法律に触れる事なのでダメには違いありませんが、そういう頭ごなしではなくて、自分が将来それで健康を損ねても構わないのかということを考えさせる必要があると思うのです。
 
健康への教育は学校だけで解決できることではないでしょう。
ですが子供が興味を持てば、親もそれを後押ししたいと思うかもしれません。
生活の中心になる家庭で、親も含めて健康への関心が高まれば、こんなに素晴らしいことはありません。
 
 
 
学校に通っている年の頃に健康への関心が低い理由の一つには「健康であっても、健康について詳しくても、周りから評価される事がない」ことがあると思います。
 
学校でテストの成績が良いことや、スポーツで活躍していること、何かのコンクールで入賞することなどは評価されますが、健康で評価されるのは「皆勤賞」くらいでしょうか。ですが、皆勤賞が将来に有利に働くことってあるんでしょうか。他の成績に比べると、評価が低いように思います。
 
 
本来、誰かに評価されるために「健康」を維持するのではありません。
ですが、勉強を頑張れば評価される、スポーツで活躍すれば評価される、賞をとれば評価される、小さい頃から「評価される」事に重きの置かれる環境で育つため、評価されづらいことの関心が低くなるのではないかと感じます。そのために健康への関心も低くなってしまうのではないかと感じるのです。
 
例えばもし、進学の時や進級の時に「健康でなければならない(身体測定や健診結果に異常があってはいけない)」という要素があれば、もっと健康に気を払うようになると思います(もちろん、生まれつきの持病や、やむなき病歴がある人には配慮が必要です)。
 
多くの方はもともと健康なので、健康になろう、と意識する機会は少なく、何かしらの不調や異常を感じてから初めて健康について考えると思います。
仮に、普段から健康を意識して色々取り組みをしても、より一層健康になったとは実感しづらく、効果を感じられないと思います。この努力って、意味があるのかしら?と感じると続けるモチベーションが維持するのはむずかしいかもしれません。
一方で、勉強はやった分だけ成績に反映されますし、運動はやった分だけ自分のパフォーマンスが向上するので、よし頑張ったな、次はもっと頑張ろうと、目標を立てやすいしモチベーションを維持しやすいように感じます。
 
一人暮らしを始めて親の有難さに気づくように、健康も当たり前すぎて有難さがわかりづらいのです。ですが健康を損なってから有難さに気づいても、もう元には戻らない、だからいま当たり前にある健康を大事にしようと教えて行くことが大切なのだと感じます。
 
 
学生の頃、国語、数学、英語、将来の進路に関わる勉強には多くの時間が割かれますが、それに比べて、自分の健康に関してはあまりに知識と関心が乏しすぎると思うのです。少なくとも病気になって初めて、医者から健康について教えられるというのでは遅すぎます。
 
高血圧は1000万人
糖尿病も1000万人
肥満は2000万人
 
と言われる時代です。
こんなに多くの方が病気なのはちょっとマズイと思うのです。
健康への関心の低さが原因だとしたら、医者にかかる前にもっと誰かが健康の大切さを知らせなければいけないと、切に感じるのです。
 
みなさんは健康について考えたことがありますか?