できる事をやるしかない

アラフォー妻子持ち医師のなんとなく思っている事

年のせい、なんでしょうか?

「最近、疲れやすいです。もう、70歳も過ぎてますし、年のせいですかね?」
患者さんから「年のせい?」と問われることがあります。
 
患者さんの本当の気持ちはわかりませんが、もう少し外出や家事の時にキビキビと動けたら良いなという願望、もしかしたら何かの病気の初期症状?という不安、が入り混じったなんとも絶妙なご相談だな、と感じます。
 
「疲れやすい」をきっかけに見つかる病気は様々で、調べてみても何も異常が見当たらない方から、甲状腺の異常、貧血、肺気腫心不全などなどの診断に至るケースもあります。検査で異常がないもしくははっきりとした異常がある場合は対応は簡単ですが、異常がないとは言い切れない場合が一番悩みます。
 
例えば、軽度の貧血が見つかったとしましょう。年を取れば血液を作る働きが弱くなって貧血になる方は多いです。一方で、鉄分やビタミンが足りない、胃や腸に病気がある、血液の病気があるなど一つ一つの可能性を考えるとかなりたくさんの検査をしなければなりません。血液検査、胃カメラ、大腸カメラ、CT検査なおなど行ってみないと、本当に病気ではないのか、自信を持ってお答えしづらいです。
これらのことを説明すると相談に来られたご本人も、そんなに大げさな話でもないので・・・と一歩引いてしまうことも多く、とりあえずもう少し様子をみます、とお引き取りになることも多々あります。
 
 
すでに診断のついている病気について考えてみても、年のせいかそうではないのか悩ましいです。
感染症、骨折、癌など多くの病気は若い方よりもご年配の方に多いです、年をとったから免疫力が落ちる、骨粗鬆症になる、細胞が劣化して癌になりやすい、これは事実です。では年をとればみんなそうなるのかと言えばそうとは限らない。当たり前の話ですが、年をとる以外にも病気になる原因が複数あります。
結局のところ、「年のせい」がどれくらいの割合で関わっているのかは判断できません。
 
医者の立場からすると、あれこれと検査を勧めるほどの状態とは感じない、でも十分調べなかったせいで病気の発見が遅れたというのは避けたい。
 
最近では病気を扱ったテレビ番組などを見て、自分も思い当たる症状があるから心配だ、検査してほしい、といらっしゃる患者さんも多いです。
医者が診る分には病気の心配はない、検査は必要なさそうだと説明しても納得してもらえないことがあります。かといって検査しないで万一あとから病気が見つかったりすると、あのとき調べてくれていれば!と揉め事になるかもしれません。
とりあえず検査して済む話なら、してしまったほうがわだかまりもありません。
(ただ、こうして患者さんの要望に応えて、必要性の低い検査をどんどん行ってしまうと国の医療費はかさみます。その辺の苦悩はまた別の機会に。)
 
結局のところ、調べるだけ調べて何もなければ年のせいなのかもしれない、と説明することにしています。もちろん、検査を望まない方にはしませんけれども。
 
 
病気じゃないですよね?年をとればだいたいみんなこんな調子ですよね?と安心を求めている方には、最低限の検査をしていただいて「多分病気ではないと思いますよ」と心配をとってあげる。
この調子の悪さは何かの病気なんじゃないか?と感じておられる方には十分な検査を行って、病気なのか病気でないのかはっきりさせる。
 
 
この辺の空気を読むとでも言いましょうか、「年のせい」に含まれる、真意を汲むのもかかりつけ医、主治医の力量なのかなと偉そうにも思っております。
 
年のせいかどうかは別にして、皆さんが病院に心配事があって受診されるときは、心配ないと不安を解消したくて行くのか、具体的に何か調べてほしいことがあるのか、率直に相談されたほうが、相手の先生も良く対応してくれるだろうと思いますよ。(病気について大して知りもしないくせに生意気だ!と怒る先生は、今は少ないと思います。)
ご参考になれば幸いです。